1.小問1(1)について(基礎編)
+(委託を受けた保証人の求償権)
第四百五十九条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。
2 第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
+(連帯債務者間の求償権)
第四百四十二条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
2 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
+(委託を受けない保証人の求償権)
第四百六十二条 主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務者にその債務を免れさせたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において償還をしなければならない。
2 主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
+(法定代位)
第五百条 弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。
・「弁済による代位」によってCが得ることになる抵当権の被担保債権は求償権ではなく、原債権である。
・CがBに対して実際にいくら請求できるかは「求償権の範囲」によって決まり、そのうち、どの範囲でBの一般債権者に優先するかは「弁済による代位」によって決定される!!!
+判例(S59.5.29)
理由
上告代理人成毛由和、同立見廣志の上告理由について
一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 訴外昌和貿易株式会社(以下「訴外会社」という。)は、昭和四六年五月二二日訴外港信用金庫(以下「訴外金庫」という。)との間で当座貸越等を内容とする信用金庫取引約定を結び、訴外会社の代表取締役である訴外Aは、昭和四九年五月二二日訴外金庫に対し、同人所有の本件建物について被担保債権の範囲を右信用金庫取引による債権等とし、極度額を六〇〇万円とする根抵当権を設定し、かつ、訴外会社の右借受金債務を連帯保証した。右根抵当権の設定登記は、同月二九日経由された。
2 訴外会社は、訴外金庫から昭和四九年五月二九日、右信用金庫取引約定に基づいて四八〇万円を、利息を年一一パーセント、遅延損害金を年一八・二五パーセントとし、弁済方法について同年一二月から昭和五二年五月まで毎月二五日限り一六万円宛分割して弁済する旨の約定、及び右分割金の弁済を一回でも怠つたときは期限の利益を喪失し残額を一時に弁済する旨の約定で、借り受けた。
3 被上告人は、昭和四九年五月一日訴外会社から、近く借受が予定されていた右借受金債務につき信用保証の委託申込を受けて、同日これを承諾し、同月二一日訴外金庫に対し右借受金債務を保証した。
4 被上告人は、右信用保証の委託申込を承諾するに際し、(1) 訴外会社との間で、求償権の内容について、被上告人が訴外金庫に対し代位弁済したときは、訴外会社は被上告人に対し被上告人の代位弁済額全額及びこれに対する代位弁済の日の翌日から支払ずみまで年一八・二五パーセントの割合による遅延損害金を支払う旨の特約をし、(2) さらに、Aとの間で、民法五〇一条但書五号の定める代位の割合について、被上告人が代位弁済したときは、被上告人はAが訴外金庫に対し設定した前記根抵当権の全部につき訴外金庫に代位し、右(1)の特約による求償権の範囲内で、訴外金庫の有していた右根抵当権の全部を行使することができる旨の特約をした。
5 訴外会社は、前記借受金につき昭和四九年一二月二五日限り支払うべき分割金の弁済を怠り、残額を一時に弁済すべきこととなり、前記根抵当権は、昭和五一年五月六日担保すべき元本が確定し、同年六月四日元本確定の附記登記が経由された。そして、被上告人は、同年七月一九日右借受金元本のうち四五四万円を代位弁済し、同日右代位弁済を原因として右根抵当権の全部について移転の附記登記を経由した。
6 原審被控訴人(一審被告)である株式会社岡島商店(以下「岡島商店」という。)は昭和四九年一二月四日に、上告人は昭和五〇年三月二八日にそれぞれ本件建物について根抵当権設定登記を経由した。
7 東京地方裁判所は、被上告人の先順位根抵当権者である訴外多畑耕三の申立により本件建物について不動産競売手続を開始し、本件建物を二八五一万円で競売し、昭和五二年七月二二日の本件配当期日において次の売却代金交付計算書を作成した。
競売手続費用 四一万七一二〇円
B 債権額 元本 一一〇〇万円
損害金 一二四万三五六四円
交付額 右各金額
被上告人 債権額 元本 四五四万円
損害金 二七万五三八五円
交付額 元本 二二七万円
損害金 一三万七六九三円
岡島商店 債権額 元本 一二〇一万七七三〇円
損害金 三五〇万八二一五円
交付額 元本 八四九万一七八五円
損害金 三五〇万八二一五円
上告人 債権額 元本 九七〇万三〇〇〇円
利息 一五七万六七三七円
損害金 三四八万九一七九円
交付額 元本 〇円
利息 〇円
損害金 一四四万一六二三円
すなわち、被上告人が元本四五四万円及びこれに対する代位弁済の日の翌日である昭和五一年七月二〇日から本件配当期日である昭和五二年七月二二日まで年一八・二五パーセントの割合による損害金八三万五三六〇円の債権額を届け出たのに対し、同裁判所は、右債権額のうち、右元本の二分の一である二二七万円及びこれに対する代位弁済の日である昭和五一年七月一九日から本件配当期日である昭和五二年七月二二日まで商事法定利率である年六分の割合による損害金一三万七六九三円に限つて交付すべきものとした。
8 これに対し、被上告人は、元本四五四万円及び損害金八三万五三六〇円の全部について優先弁済を受けることができると主張して異議を申し立てたが、完結しなかつた。
そこで、被上告人は、後順位根抵当権者である岡島商店及び上告人を被告として本訴を提起し、前記売却代金交付計算書中、岡島商店に対する交付額の元本八四九万一七八五円のうち一五二万六〇四四円、上告人に対する交付額の損害金一四四万一六二三円の全部を取り消し、これを被上告人に対する前記交付額に加え、被上告人に対する交付額を結局元本四五四万円及び損害金八三万五三六〇円の合計五三七万五三六〇円と変更する旨の判決を求めた。
以上の事実関係のもとで、原審は、被上告人の岡島商店及び上告人に対する右の請求を全部認容すべきものとし、これと異なる一審判決は不当であるとしてこれを取り消す旨の判決をし、右判決は、岡島商店に関する部分については上告期間満了により確定し、上告人のみが上告した。
二 そこで、まず、上告理由のうち、保証人である被上告人は、債務者である訴外会社との間で代位弁済による求償権の内容につき民法四五九条二項によつて準用される同法四四二条二項の定める法定利息と異なる特約をしても、第三者である上告人に対しては右特約の効力をもつて対抗することができないと主張する部分について、検討する。
弁済による代位の制度は、代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために、法の規定により弁済によつて消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり、したがつて、代位弁済者が弁済による代位によつて取得した担保権を実行する場合において、その被担保債権として扱うべきものは、原債権であつて、保証人の債務者に対する求償権でないことはいうまでもない。債務者から委託を受けた保証人が債務者に対して取得する求償権の内容については、民法四五九条二項によつて準用される同法四四二条二項は、これを代位弁済額のほかこれに対する弁済の日以後の法定利息等とする旨を定めているが、右の規定は、任意規定であつて、保証人と債務者との間で右の法定利息に代えて法定利率と異なる約定利率による代位弁済の日の翌日以後の遅延損害金を支払う旨の特約をすることを禁ずるものではない。また、弁済による代位の制度は保証人と債務者との右のような特約の効力を制限する性質を当然に有すると解する根拠もない。けだし、単に右のような特約の効力を制限する明文がないというのみならず、当該担保権が根抵当権の場合においては、根抵当権はその極度額の範囲内で原債権を担保することに変わりはなく、保証人と債務者が約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約によつて求償権の総額を増大させても、保証人が代位によつて行使できる根抵当権の範囲は右の極度額及び原債権の残存額によつて限定されるのであり、また、原債権の遅延損害金の利率が変更されるわけでもなく、いずれにしても、右の特約は、担保不動産の物的負担を増大させることにはならず、物上保証人に対しても、後順位の抵当権者その他の利害関係人に対しても、なんら不当な影響を及ぼすものではないからである。そして、保証人と右の利害関係人とが保証人と債務者との間で求償権の内容についてされた特約の効力に関して物権変動の対抗問題を生ずるような関係に立つものでないことは、右に説示したところから明らかであり、保証人は右の特約を登記しなければこれをもつて右の利害関係人に対抗することができない関係にあるわけでもない(法がそのような特約を登記する方法を現に講じていないのも、そのゆえであると解される。)。以上のとおりであるから、保証人が代位によつて行使できる原債権の額の上限は、これらの利害関係人に対する関係において、約定利率による遅延損害金を含んだ求償権の総額によつて画されるものというべきである。
上告人の引用する判例(最高裁昭和四七年(オ)八九七号同四九年一一月五日第三小法廷判決・裁判集民事一一三号八九頁)は、その原審の確定した事実関係及び上告理由に照らすと、本判決の以上の判断と抵触するものではない。
三 つぎに、保証人である被上告人と物上保証人であるAとの間でされた民法五〇一条但書五号の定める代位の割合を変更する特約の第三者に対する効力の存否に関する違法をいう部分について、検討する。
民法五〇一条は、その本文において弁済による代位の効果を定め、その但書各号において代位者相互間の優劣ないし代位の割合などを定めている。弁済による代位の制度は、すでに説示したとおり、その効果として、債権者の有していた原債権及びその担保権をそのまま代位弁済者に移転させるのであり、決してそれ以上の権利を移転させるなどして右の原債権及びその担保権の内容に変動をもたらすものではないのであつて、代位弁済者はその求償権の範囲内で右の移転を受けた原債権及びその担保権自体を行使するにすぎないのであるから、弁済による代位が生ずることによつて、物上保証人所有の担保不動産について右の原債権を担保する根抵当権等の担保権の存在を前提として抵当権等の担保権その他の権利関係を設定した利害関係人に対し、その権利を侵害するなどの不当な影響を及ぼすことはありえず、それゆえ、代位弁済者は、代位によつて原債権を担保する根抵当権等の担保権を取得することについて、右の利害関係人との間で物権的な対抗問題を生ずる関係に立つことはないというべきである。そして、同条但書五号は、右のような代位の効果を前提として、物上保証人及び保証人相互間において、先に代位弁済した者が不当な利益を得たり、代位弁済が際限なく循環して行われたりする事態の生ずることを避けるため、右の代位者相互間における代位の割合を定めるなど一定の制限を設けているのであるが、その窮極の趣旨・目的とするところは代位者相互間の利害を公平かつ合理的に調節することにあるものというべきであるから、物上保証人及び保証人が代位の割合について同号の定める割合と異なる特約をし、これによつてみずからその間の利害を具体的に調節している場合にまで、同号の定める割合によらなければならないものと解すべき理由はなく、同号が保証人と物上保証人の代位についてその頭数ないし担保不動産の価格の割合によつて代位するものと規定しているのは、特約その他の特別な事情がない一般的な場合について規定しているにすぎず、同号はいわゆる補充規定であると解するのが相当である。したがつて、物上保証人との間で同号の定める割合と異なる特約をした保証人は、後順位抵当権者等の利害関係人に対しても右特約の効力を主張することができ、その求償権の範囲内で右特約の割合に応じ抵当権等の担保権を行使することができるものというべきである。このように解すると、物上保証人(根抵当権設定者)及び保証人間に本件のように保証人が全部代位できる旨の特約がある場合には、保証人が代位弁済したときに、保証人が同号所定の割合と異なり債権者の有していた根抵当権の全部を行使することになり、後順位抵当権者その他の利害関係人は右のような特約がない場合に比較して不利益な立場におかれることになるが、同号は、共同抵当に関する同法三九二条のように、担保不動産についての後順位抵当権者その他の第三者のためにその権利を積極的に認めたうえで、代位の割合を規定していると解することはできず、また代位弁済をした保証人が行使する根抵当権は、その存在及び極度額が登記されているのであり、特約がある場合であつても、保証人が行使しうる根抵当権は右の極度額の範囲を超えることはありえないのであつて、もともと、後順位の抵当権者その他の利害関係人は、債権者が右の根抵当権の被担保債権の全部につき極度額の範囲内で優先弁済を主張した場合には、それを承認せざるをえない立場にあり、右の特約によつて受ける不利益はみずから処分権限を有しない他人間の法律関係によつて事実上反射的にもたらされるものにすぎず、右の特約そのものについて公示の方法がとられていなくても、その効果を甘受せざるをえない立場にあるものというべきである。
上告人の引用する前記判例は本件と事案を異にし、本判決の以上の判断は、右の判例に抵触するものではない。
四 叙上の見解に立つて、本件についてみるに、原審の適法に確定した前記事実関係のもとにおいては、被上告人が本件配当期日において訴外会社に対して有する原債権は、被上告人が届出をした貸金元本四五四万円及びこれに対する期限の利益を失い残額を一時に支払うべきこととなつた日ののちの日である昭和五一年七月二〇日から本件配当期日である昭和五二年七月二二日まで貸付の際の約定利率である年一八・二五パーセントの割合による遅延損害金八三万五三六〇円を超えて存在することは明らかであり、右の原債権を担保する被上告人のAに対して有する根抵当権の極度額は六〇〇万円であり、そして被上告人が本件配当期日において訴外会社に対して有する求償権は、代位弁済した四五四万円及びこれに対する信用保証の委託申込を承諾したときにおける求償権の内容についての特約に基づく遅延損害金である代位弁済の日の翌日である昭和五一年七月二〇日から本件配当期日である昭和五二年七月二二日まで年一八・二五パーセートの割合による遅延損害金八三万五三六〇円となるから、被上告人は、原債権である貸金元本四五四万円(なお原判決添付第二売却代金交付計算書中順位7の債権の種類として「代位弁済元金」とあるのは右貸金元本の趣旨と解すべきである。)、遅延損害金八三万五三六〇円の交付を受けることができ、上告人は全く交付を受けることができないものというべきである。
以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 木戸口久治 裁判官 横井大三 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦)
+(弁済による代位の効果)
第五百一条 前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
一 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
二 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
三 第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
四 物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
五 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
六 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。
2.小問1(2)について(基礎編)
+(第三者の弁済)
第四百七十四条 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
・委託を受けた弁済
→準委任(650条1項)
+(受任者による費用等の償還請求等)
第六百五十条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
・委託を受けていない場合
→事務管理を根拠
+(管理者による費用の償還請求等)
第七百二条 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
2 第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
3 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。
・第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない!
+(弁済による代位の効果)
第五百一条 前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
一 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
二 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
三 第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
四 物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
五 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
六 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。
⇔なお、物上保証人の所有する不動産を得た第三取得者にこのルールは適用されない!!!(債務者Bが自己の所有する本件土地に担保権を設定し、この債務者所有の不動産を取得した第三取得者についてのみ適用される!!!!)
・保証人は弁済前に登場した第三取得者との関係では、付記登記をしていなくとも「弁済による代位」を主張できる!!!
+判例(S41.11.18)
理由
上告代理人田口正平の上告理由第一点について。
民法五〇一条本文によれば、弁済者が代位することを得る権利は、債権の効力および担保としてその債権者が有していた一切の権利であるが、いわゆる代物弁済予約による権利は、金銭消費貸借契約の当事者間において、債権者が、自己の債権の弁済を確保するため、債務者が期限に債務を履行しないときに債務の弁済に代えて特定物件の所有権を債権者に移転することを債務者と予約するものであつて、あたかも担保物件を設定したのと同一の機能を営むものであるから、この予約に基づく権利は、同条一号に列記する先取特権、不動産質権または抵当権と同じく、同条本文にいう債権者が債権の担保として有する権利であると解した原審の見解は相当である。原判決に所論法律の解釈を誤つた違法がなく、論旨は採用できない。
同第二点について。
民法五〇一条一号において、保証人が予め代位の附記登記をしなければ担保権につき目的不動産の第三取得者に対して債権者に代位しない旨を定めた所以は、目的不動産の第三取得者は、その取得に当り、既に債務の弁済をなした保証人が右代位権を行使するかどうかを確知することをえさせるためであると解すべきであるから、保証人の弁済後に目的不動産を取得しようとする第三取得者に対しては予め代位の附記登記をする必要があるが、第三取得者の取得後に弁済をする保証人は、右代位のためには同号による附記登記を要しないものというわなければならない。けだし、もし右場合にも代位の附記登記を要求するものとすれば、保証人は、未だ保証債務を履行する必要があるか否か明らかでないうちから、当該不動産につき第三取得者の生ずることを予想して予め代位の附記登記を経由しておく必要があることになるが、これは、保証人に対し難きを強いることになるからである。右と同趣旨の原判決は相当であつて、原判決に所論の法律の解釈を誤つた違法はない。論旨は採用できない。
同第三点および第四点について。
原判決は、被上告人A被相続人Bは判示債務の弁済により債権者被上告銀行に代位し、同銀行が訴外Cに対し有していた本件不動産に対する抵当権および代物弁済予約上の権利を取得し、右権利移転の附記登記手続をなした事実を確定している。被上告人A被相続人Bが被上告銀行の有していた抵当権および代物弁済予約上の権利を取得したのは、弁済による代位であつて、権利の譲渡によるものでないことは所論のとおりであるが、右権利移転の附記登記は、本件不動産の第三取得者に対し権利取得を対抗する効力があるものと解するのが相当である。而して、上告人より被上告人Aに対する本訴請求は、被上告人Aが判示抵当権および代物弁済予約上の権利を有しないとして右附記登記の抹消を求めるものであつて、被上告人A被相続人Bにおいて右代物弁済の予約を完結したことを前提とするものではないから、この点に関する原判決の違法をいう所論は、判決の傍論として説示するところを非難するものにすぎない。原判決に所論の違法がなく、論旨はすべて採用できない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)
3.小問2について(基礎編)
4.小問1(1)及び小問2について(応用編)~任意代位の場合
+(任意代位)
第四百九十九条 債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
2 第四百六十七条の規定は、前項の場合について準用する。
+(指名債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
・任意代位の場合、Cは、その後登場した第三取得者Dとの関係で、無条件に抵当権を主張することはできるのか?